森藤 ヒサシ（もりふじ ひさし）
株式会社小貫写真館 代表取締役
有限会社ブリス 代表
国際ポートレート協会 代表理事
1968年生まれ。茨城県水戸市出身。
老舗写真館に生まれた自覚と大きくなっていったコンプレックス
1892年創業、135年続く写真館の長男として、「写真館を継ぐ」ことを宿命だと理解し、受け入れようとしていた幼少時代を過ごす。しかし友だちも多く楽しかったはずの小学校時代、6年生のときに意気揚々と立候補した生徒会選挙に落選したことをきっかけに自信を無くし、人前に出るのも億劫な性格に。さらに中高時代は写真部に所属するも、評価されず、「写真の才能がない」と思い込み、セルフイメージは低くなるばかり。日本大学芸術学部写真学科に入学したものの、現実逃避から遊びふける毎日を送り、ますます自己嫌悪に苛まれることに。
初めて「写真」と向き合ったアメリカ写真留学の4年間
大学卒業後に就職した大手コマーシャルスタジオでは、早朝から深夜まで“ボロ雑巾”のように働きながら経験を積む中、写真を本気で上手くなりたいと思い、アメリカ留学を決意。写真教育で名高いBrooks Institute of Photography（ブルックス写真大学）に留学。大学で毎週出される課題で求められたのは短期間での作品作りだった。コンセプトメイキングからモデル探し、作品として具現化し求められたクオリティで提出することを繰り返しながらスキルアップを図っていく。それまでは80点で良しとしてきた自身の写真への姿勢を改め、常に完璧を目指しながら取り組んだことが実を結び、学部最優秀賞で卒業。フォトグラファーとしての自信が確固たるものになっていく。
ライティングを極めるきっかけは、「日本人をうまく撮れない！」
帰国後は、実家の写真館に戻り、「活躍するぞ！」と意気込んで撮影に臨むも、自分の満足のいく作品が撮れないことに愕然とする。その理由は、留学中に撮影していた作品モデルのアメリカ人と帰国後の撮影対象である日本人の骨格の違いにあった。日本人を立体的に撮影するためには、ライティングの創意工夫が必要であることに気付き、これをきっかけに「ライティング」を極めていくことになる。しかしまだこの頃は写真のコンテストにも応募するも、なかなか入選が叶わず、先輩からも写真の酷評を受けるという厳しい現実に直面。悔しい気持ちを「今に見ていろ」という闘志に換えていた。
会社経営に注力するも結果を出せず「写真しかない」自分にあらためて気づく
再度、写真への自信を失いかけていた頃、以前から抱いていた写真館を大きくしたいという気持ちもあり、しばらく経営の方に注力。しかし、思ったように結果を出すことができなかった。しかして「写真館の跡継ぎとして生まれたこと」「唯一合格できたのが写真学科のある大学だったこと」「これまで写真と共に歩んできたこと」などを考えると、「自分には、写真しかない」ことに思い至り、「写真を極めて人を幸せにする仕事をしていこう」と気持ちを新たにした。2000年に多額の借金をして自分の理想とするスタジオ「パセオヌエボ」オープン。この頃から写真に変化があらわれ、再び自信を再び取り戻していく。
セルフイメージを高められるブランディングフォト®を
セルフイメージが低いことが原因で、自分に自信が持てず、ものごとがうまくいかなかった10代。自らの苦い経験もあり、「セルフイメージ」の大切さを追求し続けた結果、ビジネスパーソンを対象とした「プロフェッショナルに見える」「信頼されて選ばれる」ポートレート写真撮影を2007年に開始。サービス名を「ブランディングフォト®」とした。撮影の前のカウンセリングを通して、その人の魅力を最大限に引き出すライティングで撮影することに徹底したこだわりを見せる。「光の魔術師」として、その人の素晴らしさを写真を通して200%表現するというブランディングフォト®は、今や多くの著名人、企業経営者たちからの撮影依頼が絶えない人気メニューに。
時代の変化は受け入れる。でも、残るのは「本物」だけ
時代とともに、機材も撮影方法もライティングも、人々の写真に対する意識も大きく変化した。質の高いコンテンツの制作よりも、スピーディさが求められるという現実もある。デジタル技術を取り入れ、最新のテクノロジーを駆使しながら、その変化もポジティブに受け入れてきた。しかし、「アナログで撮影する写真の奥深さを知るフォトグラファーの1人としての矜持を保ち、本物のポートレートを追求していきたい」と語る。
日本におけるポートレートフォト、家族写真の第一人者。2013年「富士フィルム営業写真コンテスト」金賞。後進育成のためアマチュアからプロカメラマンを対象としたポートレート撮影をテーマとしたセミナーを定期的に開催。そのほかにも国内外を問わず、講演・セミナーを行っている。2017年には、オンライン動画セミナーも開講。著名人、企業の社長・経営者の撮影多数。2020年、書籍「家族写真の魔法」（WAVE出版）出版。